ストーリーテリング
企業価値を高めファンを作る、ストーリー発信の重要性とは【後編】
ストーリーで価値観を表現し、共感を生む
前編はこちら。
企業価値を高めファンを作る、ストーリー発信の重要性とは【前編】
ストーリー制作に情熱を燃やす高野ですが、ここまでストーリーの力を信じるのは、新卒時代の原体験がきっかけとなっています。
クライアントへのプレゼンが苦手で、常に営業成績が最下位だった彼女。しかし、営業トークを「コンサルサービスで成功した企業のストーリー」に変えたところ、次々と契約を獲得。あっという間に営業成績トップに躍り出ました。
「ストーリーには、人の心を動かす力がある」
そう実感した瞬間でした。
そんな彼女が作り上げるストーリーは、実際に2つの成果を上げています。
一つは、ストーリーを読んだ求職者が、求人に応募してくれたことです。
「若い頃に何度も事業に失敗した経験を持つ、経営者の方にお話を伺ったときのことです。その方は『一度夢破れた経験がある人でも、挑戦し続けられる環境を創りたい』と仰っていました。ストーリーを制作後しばらくしてから、その想いに共感した方が実際に求人に応募してくださったそうです」
また、ストーリーを読んだ内定者から、「ものすごく感動しました。来年からこの会社で働けるのが、今からとても楽しみです」というメッセージをもらったこともあるという。
「ストーリーを通してファンを生むことで、その企業と価値観の合う人材を採用できるのだと実感しました」と高野は話します。
もう一つは、取材を受けてくださったご本人が、ブランディングツールとして活用していることです。
「制作したストーリーに感激したある経営者の方は、周囲の人に『すごくいい話を書いてもらった』と触れ周り、SNSでも拡散してくださいました。ほかにも『このストーリーを読めば、私のことが全部わかりますから』と、名刺代わりに紹介してくださっている方もいます」
取材を受けた本人も感動するようなストーリーには、その人らしさが溢れていて、まさしくブランディングツールに最適なのだとわかりました。
しかし、なぜ高野の作るストーリーは共感を生み、クライアントに喜ばれるのか。その理由は、クライアントを深く理解して作っているからにほかならない。
「『あなたの一番のファンです!』と胸を張って言えるくらい、相手のことを1から10まで深く知った上でストーリーを作っています。取材中は相手の言葉を掘り下げ、価値観が手に取るようにわかるまでお話を伺っているんです。
クライアントがストーリーを読み、『うちの会社を一番わかってくれている』とお言葉をいただいたときは、本当にうれしい気持ちでいっぱいでした」と高野は笑顔を見せました。
「最近はAIの進化がめざましく、ライティング領域にも『chatGPT』が登場しました。AIは高速で情報処理ができるため、確かにライティングツールとしては便利です。しかし、ストーリー制作に必要とされる、人の想いを引き出すところまでは、まだ達していません。
私たちは、これからの時代に必要とされるストーリー発信をお手伝いするため、人対人のコミュニケーションを武器に、これからも人の心を動かすストーリーを作っていきます」
そう語る高野の表情は、自信に満ち溢れていました。
ストーリーは複数の効果を持つ、企業の資産になる
「ストーリーを語る重要性について、今はまだ一部の企業だけが気づいている状況です。そう遠くないうちに、すべての企業が気づくときが来るでしょう。そのときイニシアティブを取るためにも、いち早く企業は自社ストーリーの発信を始めることをおすすめします」
そう話す高野ですが、発信を始めるにあたって注意する点があるといいます。それは、ストーリーを制作しても、すぐに結果が出るとは限らないことです。さらに、一過性ではなく、継続的な発信が必要だともいいます。
「じわじわと時間をかけてファンが増えていくのが、ストーリーの効果です。継続して語ることで、お客様はその企業を多面的に理解できるようになり、だんだんとファンが増えていきます。
『短期間で成果が出やすい、広告の方がいいのではないか』と思う方もいるかもしれません。でも、考えてみてください。広告が人々の記憶に残るのは一時的です。ストーリーはたとえ時代が変わっても、永遠に企業のブランディングツールとして残り続けます」
実際に、高野は驚くべき体験をしたことがあるといいます。
以前、自身で女性向けWEBメディアを立ち上げ、経営者のインタビュー記事を制作していた彼女。ある日、「前に高野さんに書いてもらった記事を見て、求人に応募してきた人がいる」と連絡をもらいました。
なんとその記事は、10年以上前に書いたものだったのです。
「長期的な視点で見ると、ストーリーは確実に企業の資産になります。さらに、1つのストーリーが採用・広報・販売促進など、複数の分野で効果を発揮するツールになります」と高野は断言しました。
夢は「日本企業にチーフストーリーオフィサーを作る」こと
ストーリー制作の重要性について語る高野ですが、「求職者あるいはお客様の認知度を高める、『関連性が高く・信ぴょう性が担保された内容』は、記事コンテンツだけではなく、日々SNSで発信していくことも重要」だといいます。
「クライアントのなかには、SNSへのハードルを高く感じ、『何を発信したらいいのかわからない』と悩む企業もいらっしゃいます。今後ストーリーテラーズはコンテンツ制作だけではなく、SNS発信まで担うブランディング集団になっていきたいと考えています。
また、採用ブランディングで培ったノウハウを活かし、企業を知り尽くした広報パートナーへと立ち位置を変えていきたいです」
ストーリーテラーズの事業を通して、高野には叶えたい夢がある。それは、日本の企業に「CSO(チーフストーリーオフィサー)」という役職を作ること。
「ストーリーを適切に発信できる人がいれば、企業にファンが増え、理念に共感した人材が集まり、商品・サービスを購入するお客様が増えるはずです。
自社ストーリーを眠らせたまま、魅力が伝わっていない企業を減らしたい。そのためにも、一つひとつのストーリーでインパクトを生み、その重要性を世の中に広めていきます」
創業から約2年。制作したストーリーは年々増え、ストーリー発信の重要性に気づくクライアントも増えています。しかし、高野の躍進はまだまだこれから。日本の企業に、当たり前にCSOが存在するその日まで、彼女はストーリーを紡ぎ続けます。