ストーリーテリング
プロインタビュアーが語る、相手の本音を引き出すインタビュースキルとは!?
読み手の心に響くストーリーライティングを通じて、企業・商品・サービスを魅力的に紹介する会社、「株式会社ストーリーテラーズ」。2021年に設立され、現在はWantedlyの運用代行や、企業の採用・広報・ブランディングを目的としたストーリー制作事業を行っています。
ストーリー制作の工程は主に2つ。クライアントへのインタビューと、取材内容のライティングです。
ストーリーライティングというとライティングスキルに注目されがちですが、同じくらいインタビュースキルも重要。なぜなら、インタビューで相手の本音や背景・想いなどを引き出せなければ、読者の共感を呼ぶストーリーは制作できないからです。
そこで今回は、ストーリーテラーズ代表の高野 美菜子(こうの みなこ)が、社内のインタビュースキルNo,1と認める本部 友香(もとべ ゆか)に、相手の本音を引き出すポイントについて聞きました。
本部はIT業・製造業・保育業・スタートアップ事業での経験を経て、ストーリーテラーズに参画しました。
インタビューとは関係のなさそうなキャリアを歩んできた彼女ですが、いかにしてスキルを磨いてきたのか。また、インタビューを成功に導く必須スキルとはなんなのか。
詳しく探ってみましょう。
【インタビュー/ライティング】
ストーリーライター ヤマダユミ
一番大事なのは「相手を深く知りたい気持ち」
「インタビューで本音を引き出すには、何よりも『相手のことを深く知りたい』という気持ちが一番大事なんです。
好奇心を持って質問し、相手の答えを掘り下げ、心の奥深くにある本音を引き出す。さらには、質問を通して相手がハッとするような新たな気づきを与えることができたら、私の中でそのインタビューは成功だと言えます」
と彼女は語ります。
インタビューは「こちらの質問に対する相手の返答を聞くもの」という印象がありますが、「新たな気づきを与える」とは一体どういうことなのでしょうか?
インタビューを成功に導く3つのポイント
本部がインタビューを成功させるために意識しているポイントは、3つあるといいます。
一つ目は、「相手のことを深く知りたい」という気持ちを持って臨むこと。
なぜなら、相手への興味・関心がなければ、さらに深掘りする質問が頭に浮かんでこないから。「相手の言葉を鵜呑みにするだけでは、良いインタビューとはいえない」と彼女は話します。
「ある日の経営者インタビューで、相手を純粋に知りたいという気持ちで質問を投げかけたところ、『自分では当たり前すぎて、考えたことがなかったな…』とその方が仰ったんです。
でも、そこから深掘りする質問を続けていくうちに、次第に原体験にまで話が遡っていき…ついには『自分が何のためにこの事業を行うのか』という自らの原点に気づいてくださいました。
相手が認知していない部分を掘り下げ、新たな気づきを与えることができれば、その人自身の核となる部分が見えてくる。すると、結果的に良いインタビューになるのだと気づきました」
二つ目は、「判断」と「感情」を軸に、相手を深掘りすること。
「『判断』と『感情』には相手の価値観が反映されているので、深堀りすると人となりを詳しく知ることができます。
たとえば、『判断』は会社を移転した・海外進出することにしたなど、意識的に行うもの。対して、『感情』は驚いた・戸惑ったなど、無意識的に揺れ動くものです。
二つのうちでもポイントとなるのが『感情』だといえます。『感情』について掘り下げようとすると、実は当の本人も分からないことが多いからです。特に『少しびっくりした』など感情の振れ幅が少ない場合に意識して掘り下げると、より相手の本音が見えやすくなりますよ。
「相手が感情を込めて発した言葉」「感情を押し殺して発した言葉」「繰り返し使った言葉」は、本音を引き出すキーワードになります。私は言い回しをメモに取り、その言葉を私自身も使いながら、本音を探るようにしています」
三つ目は、自分の感じたことを臆せず伝えること。
「インタビュー中に、『この話は相手の本心ではないかもしれない』と感じることがあります。
そんなときは素直に相手に伝えて、『私の思い違いだったら申し訳ないのですが、◯◯さんのことをより深く理解したいので、もう少し詳しく教えてください』とお願いしています。
『これを聞くと失礼かな』とか、『そんなこともわからないのか』と思われる不安もあるかもしれませんが、あまり心配しなくて大丈夫です。
『あなたのことが知りたい』という純粋な気持ちで向き合えば、本音を話してくれる方も多いですから」と彼女は微笑みました。
本部はこれまでの経験から、『あなたのことを知りたい』という熱意を伝えることこそが、インタビューを成功させる鍵だと確信しています。
インタビュースキルを高めたのは持ち前の好奇心
ふと、ここで1つの疑問が浮かびます。
プロインタビュアーとして日々邁進する彼女ですが、これまでのキャリアは「システムエンジニア・営業・保育事業の経営者・外国人起業家のサポート」と、インタビューとは縁遠い職種ばかり。
一体どこでインタビュースキルを養ってきたのでしょうか。
「元々人への好奇心が強いんです。社会的な地位や年齢は関係なく、『目の前にいるその人がどんな生き方をしてきたのか・どんなことを大切にしてきたのか』にものすごく興味があります。
だから、知人でも会社に来ている清掃員の方でも、あるいは知らない人でも、『なんでその仕事をしているんですか?』とつい質問したくなっちゃって。
私にとってインタビューは、息を吸って吐くことと同じくらい、当たり前のことなんです」と彼女は笑いました。
本部は営業時代の8年間で、取引先の経営者や役職者の話をたくさん聞いてきました。外国人起業家のサポートをしているときは、彼らの夢やビジョン・現状の課題などに耳を傾けてきました。
一見インタビューとは関係のない仕事をしてきたように思えますが、「相手のことをもっと理解したい」という一心で対話を続け、人となりを深く知るために傾聴を続けてきた彼女。数えきれないほどの場数で、インタビュースキルを磨いてきたのでした。
プロ意識を持って「真剣な熱意」を届ける
「インタビューの成功は、相手が心を開いてくれるかどうかにかかっています。そのために必要なのは、『あなたのことが知りたい』という真剣で純粋な熱意です。
ときに経営者や輝かしい功績を残している人をインタビューするときには、自分の知識や経験が不足していることを理由に、不安に思うこともあるでしょう。
でも、プロ意識を持って誠実に取り組む姿勢を見せれば、どんな人にでも心を開いてもらえるようになるはずです」
とはいえ、彼女自身も毎回満足のいくインタビューができるわけではありません。「失敗した」「うまく心を開いてもらえなかった」と感じる場面も当然あるといいます。
それでも、持ち前の好奇心を原動力に、模索を続ける本部。「あなたのことが知りたい」という純粋な気持ちと情熱を武器に、彼女はこれからもインタビューに全身全霊を注ぎ続けます。